Yahoo! ネット募金 こども宅食緊急支援プロジェクト最終活動報告
新型コロナウイルスの感染拡大により、経済的に厳しい状況に置かれるひとり親世帯では、収入減等に伴い、ますます生活が逼迫している状況です。
感染防止の観点から、こども食堂といった集合的支援の提供も難しくなっており、孤立しやすく、ニーズが可視化されにくいひとり親世帯への支援は急務となっています。
一般社団法人RCFでは、2020年4〜8月にUBS社の資金支援を受け、こども宅食緊急支援プロジェクトを実施しました(こちらのページを参照)。その後も同様のスキームを活用し、Yahoo!ネット募金を通じて一般の方からのご寄付をもとに、さらに多くの地域へ支援を届けてきました。
なお、Yahoo!ネット募金では、6,000人を上回る支援者のみなさまに、総額800万円を超える寄付をいただきました。この度は、非常に多くのみなさまにあたたかいご支援をいただき、誠にありがとうございました。
2020年9月以降、このプロジェクトでは、ご家庭への食料品・日用品の配送のほか、各地域の実情に応じ、要支援世帯への見守り活動、キャリア・就労支援、食品配送に必要な設備の整備など、幅広いバックアップを行いました。
今回は、こちらのプロジェクトの結果をご報告いたします。
目次
◼︎活動内容
ひとり親世帯など、新型コロナにより経済的に苦しい状況に置かれ、支援を必要とする子育て世帯を対象として、支援活動を行う以下の団体に資金の助成を行いました。
◻︎支援スキーム
◻︎実施期間
2020年9月〜2021年3月
◻︎実施地域と支援世帯数等
地域 | 団体名 | 支援内容 | 支援世帯数 |
---|---|---|---|
青森県(三沢市ほか2市) | 社会福祉法人青森県社会福祉協議会 | 支援に繋がりにくい子育て世帯を中心に、食料品や日用品を配送 | 延2,730世帯 |
秋田県(全域) | 特定非営利活動法人秋田たすけあいネットあゆむ | ひとり親世帯、生活保護世帯、コロナ禍で減収した世帯を中心とした食料品配送のため、冷蔵庫等を整備 | 延250世帯 |
岐阜県各務原市 | シングルマザーとその子どもたちの会~freely~ | 支援を必要とする子育て世帯を中心に、食料品を配送(他資金併用) | 延299世帯 |
山口県宇部市 | かねこキッズクラブ | 支援対象児童および市が見守りを必要と判断した世帯を対象に、タブレットによる見守りを実施 | 延13世帯 |
愛媛県宇和島市 | 特定非営利活動法人U.grandma Japan | ひとり親家庭を中心に食料品や日用品を支援及び配送 | 延400世帯 |
徳島県徳島市 | 特定非営利活動法人Creer | 特定非営利活動法人Creer | 延240世帯 |
徳島県徳島市 | 特定非営利活動法人フードバンクとくしま会 | 経済的支援を必要とする子育て世帯、ひとり親世帯を中心に、食料品や日用品の支援をトライアル実施 | 延93世帯 |
兵庫県(姫路市ほか9市 | 特定非営利活動法人 フードバンクはりま | こども宅食のウェブサイトを構築(他資金併用) | 広くウェブサイトでの情報発信であるため対象世帯数なし |
熊本県(益城町、南阿蘇村、高森町) | 熊本県ひとり親家庭福祉協議会 てとてとて | ひとり親世帯を対象に、就業支援セミナーやキャリアカウンセラー面談、パソコンスキル研修会を実施 | 延134世帯 |
全国 | こどもフードプラットフォーム | 全国のこども宅食実施団体等に、食品・日用品の継続的な配布を実施(他資金併用) | ※ |
合計 | 延4,592世帯 |
※こどもフードプラットフォーム(KFP)は各地の団体に食品等の物資を無償提供する中間支援活動であり、直接の支援世帯数はカウントできないものの、20年12月~3月までの期間に自治体含め全国110団体への物資提供を行った(他資金併用)。
◼︎取組の成果
◻︎地域での具体的な取組
本プロジェクトでは上記11団体を対象に支援を実施しましたが、今回はその中から5団体について、その具体的な取組と成果をご報告いたします。
1.特定非営利活動法人U.grandma Japan(愛媛県):食料品や日用品の配送
特定非営利活動法人U.grandma Japanでは、2019年より愛媛県宇和島市内で子ども食堂を運営しています。新型コロナウイルスの蔓延に伴い、2020年4月からは、ひとり親家庭に対しお弁当を配布するなど、アウトリーチの支援事業を実施してきました。
さらに支援を拡充させるため、今回のプロジェクト資金を活用し、お米や冷凍商品、野菜や生活雑貨等、充実した食料品・物資を、2021年1月から3月にかけて延べ400家庭へ提供しました。
地域内の社会福祉協議会からも「先月お届けしたご家庭からも感謝の言葉をいただくだけでなく、社協へ来てもらうきっかけにもなり大変嬉しいです」という声が聞かれ、さらなる子育て家庭の孤立防止に寄与しました。
2.特定非営利活動法人Creer(徳島県):食品の配送
Creer(クレエール)では、2018年から徳島市で子ども食堂を運営していましたが、新型コロナウイルスの蔓延に対応したアウトリーチ支援を行うため、2020年10月より無料で食材をお届けする「子ども宅食便」を開始し、すぐに食べられるクレエールレストランのお弁当や、お米、レトルト食品、飲料、野菜、果物などを届けました。
より多くのニーズに対応するため、本寄付金を活用し、昨年12月にはクリスマス宅食を実施しました。配送においては、スタッフがサンタクロースに扮し、上記の食材のほか、ケーキやクリスマスブーツのお菓子もプラスしてお届けしました。2週間で59世帯、105人の子どもたちへ支援を届け、喜ぶ顔を見ることができました。
その後も1月から3月まで定期的にお米や野菜、保存食やお菓子といった食料品や、消毒液、マスク等の日用品の配送を継続し、全4回の配送を通じて延べ275世帯に支援を届けました。
3.特定非営利活動法人フードバンクとくしま(徳島県):食品や衛生用品の配送
特定非営利活動法人フードバンクとくしまでは、2012年から無償で得られた食材や食料品を、福祉団体を通じて必要とされる人々に届ける活動を実施していましたが、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、ひとり親家庭や子育て世帯の困窮が深刻になっていることを背景に、徳島市内在住の子育て世帯を対象とした個別宅食と見守りをスタートしました。
宅配においては、徳島県内の企業・団体であるソライロテーブル、ここから徳島店、くらもと広場等の地域団体と協働し、2月から3月にかけて31回の配送を実施し、延べ93家庭へお弁当や保存食、マスクや消毒液等の衛生用品を提供しました。
また、配送だけでなく、こども宅食事業の大きな目的である、アウトリーチによる家庭の見守りを通じた外部支援への接続も実施しました。
4.特定非営利活動法人フードバンクはりま(兵庫県):食品保管用の倉庫の設置
フードバンクはりまでは、個人や団体から寄贈された食品を保管し、食品が必要な世帯や団体に配達する活動を行っていますが、食品を保管するための倉庫が不足していました。
そこで、この度、本寄付金を含め多様な財源を活用して、食品配送だけでなく、活動に必要な基盤整備として、フードバンク用の新倉庫を設置し、保管できる食品を大幅に増やすことができました。
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5.社会福祉法人 熊本県ひとり親家庭福祉協議会 てとてとて(熊本県):就業支援セミナーやキャリア相談
社会福祉法人 熊本県ひとり親家庭福祉協議会 てとてとてでは、ひとり親家庭の支援活動に取り組む市民団体や企業の活動サポートや、ひとり親家庭の相談・支援事業など、見守り活動を実施しています。
2020年4月からは新型コロナウイルスの影響を受け、就学期の子どもを育てるひとり親世帯を対象に、食料品の無償提供を行う「てとてとておたがいさまBOXプロジェクト」を開始してきました。
今回のプロジェクトでは、ひとり親を対象とした就労支援に力を入れ、食材頒布会と組み合わせたキャリア相談等を開催し、延べ134名へ支援を届けました。今後も、パソコンスキル講座などに取り組む予定となっています。
Yahoo!ネット募金のページでも各団体の活動報告を掲載しております。こちらからご覧下さい。
◻︎ご家庭からの声
上記のような取組が各地域で展開される中で、支援を受けたご家庭から多くの感謝の声、喜びの声が寄せられました。その一部を紹介します。
・天候の悪い中、わざわざ玄関先までご丁寧に渡していただいて本当に感謝しかないです。夕飯の時間帯なのに職員の方々のお気持ちがとても嬉しかったです(青森県)
・コロナでこの先がわからなので不安だらけですが、食糧支援の箱が届くとこども達が笑顔になります。ありがとうございます。(秋田県)
・ひとりで子育てをしていると不安になることがあります。発達障がい、喘息と病気を持っているので学校も遅刻や欠席がちです。正規で働きたくても、難しい状況です。そんな中で、出会えて救われました。いつも感謝の気持ちでいっぱいです。(岐阜県)
・いつもありがとうございます。毎回娘と二人で美味しくお野菜もすべていただいております。私たちのことを気に掛けてくださりありがとうございます(^-^)(徳島県)
・このような支援は今までなかったので、すごく助かります。(愛媛県)
・普段子どもが喜ぶものをお送りいただくことが多いですが、今回は私にとってうれしいものが入っていた。普段買えないのですごくうれしかったです。(KFP)
・ 前にリクエストした除菌グッズ、それも低アルコールに感激しました。うちの子どもはアルコールのアレルギーがあり、気になっていました。(KFP)
◻︎相談や支援につなげた事例
「こども宅食」では、食料品や日用品の支給だけではなく、家庭と直接LINE等を通じてつながることで個別のニーズを把握し、必要な支援につなげることを目的としています。
今回の緊急支援では、下記のように、各地域においてさらなる支援につなげる事例が見られました。
・ひとり親家庭だが、実家暮らしのため、手当の支給対象にならず、生活が苦しい。生活困窮者自立相談窓口にて就労支援を行い、就職決定。(青森県)
・お母さんが精神疾患をもっておられることで、次男が”ヤングケアラー”になりつつある状況を、各務原市子ども家庭課へ相談。今後は子ども家庭課と連携し、子どもたちについての情報交換を行っていくことになった。(岐阜県)
・宅食で夕方伺っても、子どもは出かけていると言って会えない。夜遅く通ってみると、真っ暗で誰もいないようだ。心配なので、行政の方でも気を付けてほしい。子育て支援課へ連絡した。(徳島県)
・就業時間が減ったことで収入が激減。副業を探しているとの相談。非正規雇用であるための不安定さが続いているので、転職に向けての支援が必要なケース。母子会の就業支援につないで登録してもらう。(熊本県)
・仕事がなく収入がない家庭に、「仕事と生活の相談室」という社会福祉協議会の窓口を紹介した。(兵庫県)
・社協より宅食を依頼されていた経済的支援が必要な家庭に対し、児童ソーシャルワーカーと情報交換し今後の見守り支援となる。(愛媛県)
◼︎今後の展望
このように、今回のプロジェクトではコロナ禍により影響を受けた家庭に対し、食料や日用品の配送のみならず、幅広い分野での支援を実施することができました。しかし、非正規雇用の方々の雇い止めや、女性の孤立など、ますます厳しい状況に置かれる人々が増えるなか、このような経済的影響は中長期に現れてくると考えられます。
今回は緊急支援としてプロジェクトを実施しましたが、RCFでは引き続き中長期的な視点を持ち、一歩先を見据えて支援のコーディネートを行っていきます。