コミュニティ形成の現在地とこれから
沿岸のコミュニティ形成ノウハウを内陸へ
岩手県の災害公営住宅の建設は、残すところあと盛岡市の1団地のみとなりました。
沿岸部で先んじて取り組まれてきたコミュニティ形成のノウハウがいま、内陸部で求められています。
2019年12月に開催された「令和元年度第2回内陸災害公営住宅コミュニティ担当者意見交換会」では、宮古市社会福祉協議会から内陸部の行政担当者と支援者に向けて、コミュニティ形成の事例紹介が行われました。
岩手県の災害公営住宅の9割以上は沿岸部にありますが、津波被害のなかった内陸部の6市(盛岡市、花巻市、北上市、奥州市、一関市、遠野市)にも合計9つの団地が建設されています。
RCFでは、災害公営住宅のある沿岸部・内陸部の12市町を対象に、「コミュニティの状況調査」、「コーディネート」、「支援人材の育成」を軸としたコミュニティ形成支援事業を行っています。
宮古市と内陸の共通点
災害公営住宅でのコミュニティ形成のプロセスは、入居が完了すると住民同士が話し合いを行いながら生活面のルールを整え、「団地単独の自治会設立」または「地区町内会への加入」を目指していくのが一般的です。
このプロセスを通じて空間を共有する住民同士につながりが生まれていきます。
沿岸部は一団地あたりの入居者数も多いため、単独で自治会を設立して新たなコミュニティを築くのが主流となっていますが、内陸部の場合は団地の規模が小さいことなどから、ほぼすべての災害公営住宅が周辺の町内会(コミュニティ)の一員として直接融合する方針が取られています。
宮古市は災害公営住宅の規模が内陸部と同様に比較的小さいこともあり、沿岸部で唯一すべての災害公営住宅を町内会に融合する方針を掲げており、沿岸市町のなかでは内陸部と類似する状況にある自治体です。
また、災害公営住宅への入居のほとんどが2014〜15年に完了しているため、建設中または竣工から間もない災害公営住宅が多い内陸部にとっては、先行事例が多くある地域といえます。
当日の発表では、「たとえ団地自治会がないとしても、団地側に地域の窓口役となる住民は必要であること」、「被災者の背景理解が及びにくい町内会長に対しては、支援者が団地住民の状況や背景をこまめに丁寧に伝えること」、「年2回の大掃除イベントなどの地域行事を交流促進のきっかけにすること」など、具体的な事例を交えながらコミュニティ形成のノウハウが共有されました。
一般施策へのスムーズな移行に向けて
災害公営住宅のコミュニティ形成は、住戸環境、入居戸数、住民の性質、周辺地域の状況など様々な要素が絡まり合うため、ある課題に対して特定の解決策を示すことは非常に困難です。
発表でも、ひとつの課題に対してバックグラウンドの異なる複数の事例が紹介されました。
質疑では、「Q. 地域や団地のキーパーソンの見つけ方(⇒A. 旧知の住民とつながる、頼りにしていることを伝える)」や、「Q. 世話を焼きすぎる住民による過干渉問題(⇒A. ストッパー役の住民をつける)」など、内陸が現在進行系で直面するコミュニティ課題に関する質問が上がりました。
内陸における災害公営住宅の数は各市1〜2団地と少ないとはいえ、行政や支援者は過去に経験のないコミュニティの課題にリアルタイムに対応することが求められています。
沿岸部と同様、復興・創生期が終了する2020年度末までにコミュニティ形成に一応の目処をつけるべく、「支援をどう終えるか」という被災地域共通の課題に向けて、今後も行政と現場支援者の連携が求められています。
事例別ノウハウのスライド例
行政と社協の連携イメージ