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兼業官僚がインタビュー~プロジェクト編~「RCFと政策提言(防災)」 

はじめまして!霞が関で働いている篠原です。
今年、国家公務員の兼業を後押しするため、兼業許可の基準が明確化されました。この波に乗り、5月15日からRCFでの活動を始めました。そんな行政官からみたRCFの活動をこれからインタビュー形式で紹介していきます。

「RCF」と聞くと、どんなイメージを持っていますか?
「東日本大震災の復興支援をしている団体」というイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。元々、RCFは、2011年、東日本大震災を機に、「RCF復興支援チーム」として設立されました。以降、被災者のコミュニティ形成支援など東北の復興に向けた数多くの活動を行ってきましたが、実は、被災地域での活動での経験を活かし、全国の社会課題を解決するためのプロジェクトも行っています。その一つが昨年秋から始めた「防災」事業です。
今回は、この「防災」事業として、RCFが始めて取り組んだ「災害対応研究会」の活動について、RCFの四登さんにお話を聞いてみました。

―― まず、「災害対応研究会」を始めた問題意識について教えてください。

災害対応が阪神淡路大震災からアップデートされていないというところに強い危機感がありました。阪神淡路大震災以降、災害関連死での犠牲者は約5,000人いるのですが、有効な対策が打てていません。この課題を解決するためには、省庁を巻き込み、民間、NPOなどによるセクターを越えた議論が必要だと考えていました。ちょうどその頃、復興支援をご一緒していたグーグル合同会社さんも防災フェーズへの展開を考えており、一緒に活動を始めました。

「災害対応研究会」がとりまとめた提言について

―― 今回、この研究会では、提言をとりまとめていますが、この内容はどのようなものなのでしょうか。

今回の研究会では、「情報」を切り口にして議論しました。提言は、大きく3つの柱から構成されており、①Lアラートの拡充、②被災自治体の負担軽減、③災害関連死の防止と避難所以外の被災者支援となっています。

―― 提言のおもだった中身について教えてください。

① Lアラートの拡充
Lアラートは避難者に対して、主に避難情報が送られるのですが、避難情報に加えて生活支援情報も載せられれば、避難者にとって必要な支援につながります。そのためには、情報の入力サイドで生活関連情報を扱う事業者の協力が必要です【提言2】。また、水道情報などのライフライン情報といった様々な情報を入力するとなると、自治体側も防災担当以外の部署も入力できるようにしないといけません【提言1】。
Lアラートの出口についても、多くの避難者に情報を届けるために、発信する媒体の多様化や海外の方向けに多言語化も必要です【提言3】。

(出典:一般社団法人マルチメディア振興センター)

② 被災自治体の負担軽減
災害時の応援職員の業務は多岐に渡るのですが、「広報活動」の業務がまだ明確に支援業務に位置づけられていない現状があります。災害時の混乱状況の中では、情報は被災者にとって、とても重要なものになるので、事務局支援業務の中に「広報活動」を明記した方がよいと考えています。また、「広報」といっても、平常時と災害時の広報は性質が異なります。現時点では、マニュアルがないので、内閣府が行っている防災研修に広報研修を入れる必要があります。また、平時から民間の専門NPOなどとの連携を強化することも重要です【提言4・6】
さらに、災害時の現場では、災害対応業務のトレーニングを受けていない人も参画するので、災害対応業務ごとの計画立案、職員の調整などができるマネジメント人材の育成も必要です【提言5】。

③ 災害関連死の防止と避難所以外の被災者支援
災害関連死については、被災地域の避難所運営を支援し、災害関連死を防止するための専門職員派遣制度の構築が必要だと考えています。具体的には、DMAT(ディーマット)(※)のようなものを想定しています。もちろん、このような専門職人材を育成するためのノウハウの体系化も必要です。提言には書いていませんが、「災害関連死マネジメントチーム(DMT)と名付けようとしています【提言8】。
避難所以外の被災者支援についてですが、現状、首都直下地震などにおける国のプッシュ支援は、避難所と在宅避難をしている住民が対象となっており、帰宅困難者などが含まれていないので、このような人たちもカウントしてプッシュ支援の必要物資量を考えないといけません【提言7】。
災害時、避難所以外では、なかなか避難者がどこにいるのか把握するのが困難なのですが、近年、自治体のアプリでそれが可能になってきています。例えば、福岡市の防災アプリでは、避難者が自分たちがここにいます、何人います、という情報を入力し、自治体がその情報を把握できるようになっています。このような防災アプリ間の拡張や、情報連携ができればよいのではないかと考えています【提言9】。

(※)DMATとは「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており、災害派遣医療チームDisaster Medical Assistance Teamの頭文字をとって略してDMAT(ディーマット)と呼ばれています。医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。

―― この提言を取りまとめたことにより、何か前に進んだことはありますか

今回取りまとめたものは、自民党災害対策特別委員会諸課題対応に関する小委員会、立憲民主党災害対策部会へ、それぞれ関心課題に沿って提言を行いました。今回の研究会のアウトプットは10の提言にまとめられていますが、そのいくつかは実現に向けてすでに動き出しています。今回のように提言を実現してくれる場に持っていき、実際に課題解決につながってようやく社会的意義につながります。

「コーディネーター」としての提言に対する想い

―― RCFの皆さんは、「コーディネーター」として活動されています。コーディネーターは、どのセクターにも属さない立場で協働を促進し、各セクターを超えて社会課題を起点として価値創造を目指しています。「コーディネーター」として、今回の提言に対する想いを聞かせてください。

実効性のあるものをつくるには、セクターを越えた議論が必要です。それぞれが強みを活かして意見を言い合い、その意見を各セクターの立ち位置を理解した上でまとめ上げ、さらにはみなさんと一緒に実現までもっていくのがコーディネーターです。
今回は現場の声として、阪神淡路大震災を経験し、その後も応援職員として被災地に入り続けていらっしゃる神戸市、被災自治体の現場はもちろん、省庁や自治体の防災施策についても詳しい東京大学の宇田川真之先生、そして、避難所情報の可視化など情報技術を活用して災害対応をしてきたグーグルさん等からご意見をいただきました。
今回、各々の提言の実現のめどが立ってきたのは、議論を通して、現場が抱えている課題を理解し拾い集め、提言に反映させることができたからだと思います。
一方で、現場の意見だけくみ取ればよいというわけではありません。実行に移すためには行政の力も必要です。今回のLアラートは、省庁横断的な取組で、総務省、内閣府、消防など様々な省庁が関係します。省ごとの役割分担については、各省とも議論し、各省の考えや役割を学びながら、対応を細かく設計したため、実現に向けて動き始めることができました。
また、RCFはコーディネーターとして、中立的に各方面とのネットワークを持っていることも強みだと思います。省庁とのつながりもそうですし、今回、与野党への提言が実現できたのも、これまで様々な社会課題について議論を重ねてきたことがあったからです。与野党への提言を通じて政府の方針に反映されれば、今後の防災・災害対応のあり方を変える第一歩となります。

官民と協働し政策提言を出していく意義

―― RCFでは、成果を最大限横展開することを目指し、政策提言を行うことが多いですが、官民と協働し政策提言を出していく意義について教えてください。

一番大きいのは、現場の課題認識を行政に届けられたことです。阪神淡路大震災から災害対策が大きくアップデートされず、例えば避難情報の後の生活情報の収集は長らく被災者の方の負担でした。この提言が実行に移されることで、被災者の方に必要な情報が届くようになります。
また、提言をまとめる過程でセクターを越えた官民のネットワークが形成され、これからの協働にもつながっていくのではと考えています。

インタビュアーから最後に一言

「防災」。寺田虎彦も『天災と国防』の中で、「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を充分に自覚して、そして平生からそれに対する防御策を講じなければならない」と警鐘を鳴らしています。昨年も、6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月の北海道胆振東部地震と自然災害が立て続けに発生しました。日本は災害大国です。RCFでは、災害対応に今まで携わっていた方々が各々抱いている課題認識に基づき、多様なセクターと共に、一人でも災害による犠牲者を減らせるよう、今後も防災事業に取り組んでいこうと考えています。

社会課題を解決するためには、官民が協働して取り組まなければいけません。それぞれのセクターが持つ良さ・強みをつなげて、価値を創出する役割を担っているRCF。社会課題が複雑化するなか、RCFの担う役割はますます重要になっています。今までは、一行政官としての仕事をしてきましたが、このようなトライセクターとしての視野を養うことは、今後、より実効性の高い施策立案に役立つのではないかと感じました。

(参考)
災害対応研究会について(提言の全容はこちらをご覧ください!)
Lアラートについて-1
Lアラートについて-2
福岡市 防災アプリ『ツナガル+(プラス)』

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