ニュース

  1. HOME
  2. ブログ
  3. コラム
  4. 行政官がインタビュー ~プロジェクト編~RCFは、休眠預金を活用した台風災害における復興支援を進め始めています!

行政官がインタビュー ~プロジェクト編~RCFは、休眠預金を活用した台風災害における復興支援を進め始めています!

 今年も早いもので5月に入りました。新型コロナウイルスの流行が早く収束することを祈るばかりです。RCFの代表の藤沢が定期的にコロナの状況について発信(https://note.com/retz)しておりますので、是非ご参照ください。

 さて、今回のインタビューですが、プロジェクト編になります。突然ですが、金融機関の口座で10年以上出し入れがない、いわゆる休眠預金は毎年どれぐらいの額になるかご存知ですか?実は、毎年数百億円規模の額(!)になっています。

 この預金を有効に活用して、山積している日本の社会課題を解決できないか。2018年1月、「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」、通称「休眠預金等活用法」が施行され、政府は、この休眠預金を活用して、社会の諸課題を解決するために活動している民間団体への支援を始めました

 そして、RCFはこの休眠預金を活用した事業(以下、「休眠預金等活用事業」と記載)の支援対象分野の一つである、災害支援の「資金分配団体」に指定され、被災地域において復興を担っていくことを目指す現地団体(休眠預金等活用事業においては「実行団体」と呼ぶ)を支援することにより、災害復興を推進していくことになりました。

 では、早速、この事業の内容について、担当の新倉にインタビューした結果をご報告します。

休眠預金等活用事業とは

―― まず、今回政府が始めた「休眠預金等活用事業」の概要について教えてください。

 日本は、高齢化をはじめ様々な社会の諸課題に直面しています。これらの社会課題は、国や地方公共団体だけで解決するのは困難で、現場の実情に応じて機動的かつ柔軟にニーズをくみ取り、課題解決に向けた活動を今実際行っている民間の力を活用することが重要です。そこで、2019年度から、毎年数百億円程度といわれている休眠預金の一部を活用して、もちろん、預金者に払い戻す努力を尽くした上で、社会の諸課題を解決する取組をしている民間団体を支援することになりました。

 休眠預金等活用事業では、社会の諸課題は、大きく3つに分類されます。
 ①子ども及び若者の支援に係る活動
 ②日常生活または社会生活を営む上での困難を有する者の支援に関する活動
 ③地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援
のいずれかに該当する事業を実施していくこととなります。

 少し細かくなりますが、休眠資金の活用の流れについてご説明します。下の図をご覧ください。まずは、金融機関から休眠預金を預金保険機構に移管し、この機構から、「指定活用団体」が資金交付を受けます。そして、この指定活用団体が、上記に挙げた3つの社会課題解決に向けた包括的支援プログラムを企画・設計する「資金分配団体」への助成を行います。「資金分配団体」は、実際に民間公益活動を行う団体である「実行団体」に対する助成、貸付け、出資を行います。

出典:一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)WEBサイト(リンク

 「指定活用団体」、「資金分配団体」、「実行団体」はいずれも公募で選定されます。RCFは、「指定活用団体」として採択された一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が4つの事業区分(①草の根活動支援、②新規企画支援、③ソーシャルビジネス形成支援、④災害支援)で公募した「資金分配団体」の④災害支援分野にエントリーした結果、昨年11月に採択され、「資金分配団体」として支援活動をすることになりました。

―― では、次に、「資金分配団体」としてのRCFの活動内容について教えてください。

 皆さんご存知のとおり、2019年は災害の多い年でした。9月には、千葉県を中心に暴風により家屋の損傷や大規模停電をもたらした台風15号、10月には東北、関東甲信越の広域にわたって豪雨による河川氾濫などを引き起こした台風19号、さらに、10月25日、千葉県や福島県を中心として記録的な大雨による災害がありました。

 11月に「資金分配団体」として採択されたRCFは、これらの被災地を対象に、12月に「実行団体」の公募を開始し、2月に第一号の団体(一般社団法人Teco)を採択しました。今回採択された一般社団法人Tecoは、台風19号の豪雨の影響で浸水被害を受けた被災者にとって心のよりどころとなるような、地域のコミュニティの核となる場所をつくりたい、という事業のご提案でした。

台風災害の被害の様子

 実際、支援活動をするのは、「実行団体」であり、RCFの役割は、「実行団体」の伴走支援です。今までRCFは、2011人の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨の被災地で、コミュニティ形成、人材支援、事業者支援などを、社会事業コーディネーターとして継続的に取り組んできました。このノウハウを活かして、今回の採択された一般社団方法人Tecoのコミュニティ形成支援事業の伴走支援を行っていきます。
(今後順次追加の採択団体は公開予定)

―― もう少し、今回採択された、一般社団法人Tecoの事業概要について教えてください。

 取組む内容としては複数あるのですが、大きく、「地域密着型のコミュニティスペースの運営」「公営住宅におけるコミュニティ形成支援」「被災者の心身の健康支援」「支援の連携体制の構築」「正確な情報発信」が挙げられます。各々の取組概要は以下のとおりです。

「地域密着型のコミュニティスペースの運営」:今回被害の大きかった地区にコミュニティスペースを設け、被災者が集えるサロンや交流イベントを行うとともに、このコミュニティスペースが被災者への情報提供を行うなどの復興拠点としても活用できるようにする。
「公営住宅におけるコミュニティ形成支援」:被災された方が住んでいる公営住宅の自治会と共同で、季節の行事やお茶会など、地元住民の方と避難されてきた被災者との交流の機会を設ける。また、孤立しがちな被災者に対し戸別訪問を行い、支援情報の周知を行う。
「被災者の心身の健康支援」:行政や他団体と連携し、健康相談会などを行い、被災者の健康支援を行う。
「支援の連携体制の構築」:支援団体の情報共有のみならず、被災者個々の課題に応じた解決のため、支援団体間の調整等を行う連携体制を構築する。また、近隣地域の安心見守り隊の取組を参考に、地域の高齢者等を見守る地域のネットワークをつくる。
「正確な情報発信」:コミュニティスペースで最新の情報を提供するとともに、ホームページや地元と共同のフリーペーパーの発行などにより被災者支援情報等の発信を行う。


Tecoの皆さん

コミュニティ形成事業の鍵は?

―― 今回のTecoの事業の柱はコミュニティ形成になります。私が復興庁で被災者支援をしていた際にも、コミュニティ形成は重要視されていましたが、やはり、被災地では、地域コミュニティをどのように作っていくかが重要ですね。新倉さんは現地にも行かれていらっしゃいますが、何か現地を見て感じられていることはありますか。

 今回採択された実施団体の活動地域は、台風19号の被災地ですが、東日本大震災などの時も同様に、被災地は、もともとあった地域の課題が先鋭化されているように感じます。災害弱者という言葉がありますが、災害が起きた際、被害を受けやすいのは、高齢者や障害者といった方々です。被災者の孤立化についていえば、どちらかというと高齢の方、独居の方、低所得者の方など、平常時からサポートが必要であったり、社会的なつながりが薄かったりする方が支援を得られずにただ耐えていたり、困っていたりしています。
 そのような方を支えられる地域のコミュニティが平常時からないことが、被災することである意味、浮き彫りになるような印象を受けています。本来なら、平常時から、このような声をなかなか上げられない方々には、アウトリーチが必要なのです。

 代表の藤沢が申していますが、東日本大震災後の東北復興において、「心の復興」がソフト面での支援の一丁目一番地となり、被災住民を支える様々な取組が行われていますが、被災地以外の地域では、いわゆる弱者と言われている方々への支援はまだまだ限定的です。しかし、今回、RCFが「実行団体」の公募をした際、複数の地域からコミュニティ形成支援事業の応募があり、現場もまた、この必要性を強く認識していることが分かりました。

コミュニティスペースにて、地域住民の方々とお茶会や健康体操、様々なイベントを行っています

―― RCFはこれまでも地域のコミュニティ形成事業に取り組んできていますが、一つ今までの取組事例を教えていただけますか。

 東日本大震災の被災地である、岩手県釜石市で実施した、外資系金融機関であるUBS社の御支援をいただいて行ったコミュニティ形成支援事業についてご紹介したいと思います。

 この事業は、釜石市の南部に位置する、人口約2千人の唐丹(とうに)町において、復興コーディネーターとして、若者、女性を含めた地域住民の主体性を引き出しつつ地域コミュニティを形成していきました。

 この事業の特徴的な点は、コミュニティ形成の際、マネジメントにも力を入れた点です。「代表性のある住民組織が存在する」「住民による自発的な活動が行われている」「議論において女性や若者などの意見が吸い上げられている」など、コミュニティ形成において鍵となる14のまちづくり指標を、地域の皆さんと議論して設定し、達成されているか否か、定期的に確認を行い、RCFは、コーディネーターとして伴走支援を行いました。この事業の成功モデルは、その後、岩手県の他の自治体等に横展開され、さらに、コミュニティ形成支援が政府の復興政策の中で重要視される一つのきっかけにもなりました。

 また、コミュニティ形成の際、様々な機関との連携は不可欠です。この釜石では、行政とパートナーシップを組み、地域コーディネーター「釜援隊」を組織しました。釜援隊は、まさにRCFが行ってきている、住民、企業、NPO、自治体などの異なる組織間の架け橋となって調整を行うコーディネーターの役割を果たします。この総合調整を担える方が地域にいることがコミュニティ形成では必要なのです。この「釜援隊」は総務省の総務省の 復興支援員制度を利用した市事業として、2013年4月に発足し、全国から釜石を支援するために集まった方々です。

―― 地域のコミュニティ形成事業において、何が一番鍵となるとお考えですか。

 一言で申し上げますと、その地域を率いていけるような中間支援組織の形成、人材育成・確保だと思います。そのため、休眠預金等活用事業においては、地域において中長期的に復興支援を担っていく団体を育成していくことを目指しています。

NPOなどの非営利組織が、行政や企業をパートナーとして社会事業を生み出し続ける存在となりうるのか?

―― この「休眠預金等活用事業」は、我が国では前例のない、いわゆる「社会実験」とも言われており、民間公営活動を行う団体の実力が試されているともいえます。NPOなどの非営利組織の果たす役割についてどのようにお考えですか? 

 「休眠預金等活用制度」は「攻めの助成」とも呼ばれており、社会的インパクトを生み出すため、社会的インパクト評価(※)による成果の可視化など、様々な仕組みが設けられています。今後3年間にわたり「資金分配団体」の公募が行われ、「休眠預金等活用制度」は事業拡大していきますが、5年後に成果を振り返り、制度の見直しを行うこととされています。この制度趣旨に応え、充実した社会的成果を生み出し、非営利組織が社会課題解決を果たす存在として十分であることを示すことが我々に課された大きな課題です。

 また、この制度の特徴として、プログラム・オフィサー(PO)と呼ばれる担当者が実行団体に伴走支援を行うことが挙げられます。POは、民間助成財団の活動が活発なアメリカでは人気職種の一つだそうです。日本ではこれまでPOのような役割は一般的ではなかったのですが、この「休眠預金等活用制度」の中で、体系的な研修のもと育成され、3年間のうちの2019年度だけで約50名のPOが輩出されています。RCFも私を含め2名がPOとなりました。

(※)社会的インパクト評価について
https://www5.cao.go.jp/kyumin_yokin/impact/impact_index.html

―― POはアメリカでは人気なのですね。アメリカでRCFのような社会課題解決のために活動している団体でPOとして名をはせている方についてご存じですか? 

 フォード財団元理事長のスーザン・ベレスフォード氏が挙げられます。フォード財団でPOとして活躍し、2004年~2006年、米経済誌「フォーブス」の最も影響力のある女性100人にも選ばれています。
 スーザン・ベレスフォード氏は、POの役割を「リソース」という言葉を用いて二つの意味合いで表現しています。一つは、助成団体のPOは、解決をもたらすのではなく、解決のための「リソース」であるべきだ、と。答えを押し付けてはいけないのです。二つ目は、助成を受ける団体に不足している何かを補う「リソース」をPOはできるだけたくさんもっていないといけない、と。

―― 最後に、社会事業コーディネーターとして、今回の事業に携わる意気込みをお願いします。

 「休眠預金活用支援事業」をとおして、我が国で多くのPOが輩出されていきます。POが育成されることで、民間公益団体の足腰が強くなり、より多くの社会的な成果を上げられるようになっていくのではないかと思っています。社会事業を生み出す人と仕組みを活かして、非営利組織がこれまで以上に社会に欠かせない存在となるよう、その一員として、新しいステージに進みたいと思っています

―― インタビュアーから最後に一言

 RCFに入って、私が思っていたことは、RCFが果たしている役割、社会事業コーディネーターが全国にもっといれば社会課題解決が進むのに、ということでした。今回の「休眠預金活用支援事業」は実践経験を積んだ社会事業コーディネーター、言い換えればPOがどんどん輩出されていくことにもつながります。山積になっている我が国の社会課題を解決していくにあたり、行政だけでは限界があります。行政、民間、NPOがタッグを組み、各々の強みをいかして総力戦で取り組んでいかないといけません

 このセクター間の総合調整を行って、スーザン・ベレスフォード氏の言葉を借りれば解決のための「リソース」たる人材、この記事を読んでいる皆さんの中で興味を持たれた方がいらっしゃれば、是非RCFの門を叩いてみてください!

関連記事

カテゴリー

新着情報

月を選択

Shortcodes Ultimate