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卒業生
山口 里美

【地域資源の組み合わせから協業を生み出したい】価値観を共有しながら自走を促すのがコーディネーターの役割

プロフィール
国際基督教大学教養学部教育学科卒業を卒業後、青年海外協力隊へ。タイで村落開発普及員として農村開発などに関わった後、テレビ番組制作会社でドキュメンタリー番組の企画・制作に携わる。2012年8月にRCFに入社し、以後岩手県釜石市を拠点として、UBSグループ釜石コミュニティ支援プロジェクト、岩手県被災地コミュニティ支援コーディネート事業、いわて三陸 復興のかけ橋事業、釜石市とAirbnb社の連携協定に基づく民泊推進、釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)ほか各地の復興支援員の設置・サポート 等、多数のプロジェクトを推進
◆RCFに入社するまでのことを、教えてください。
学生時代は、心理学、教育行政、国際教育など、学問としての教育を学んでいました。そのなかにはマスコミュニケーション論を学ぶ講義もあったので、国際公務員とマスコミ、両方に興味を持っていました。

新卒時もテレビ番組制作会社に内定をいただいていたんですけど、青年海外協力隊にも合格したので、先に海外を経験してみようと。

タイ東北部で、地域にある資源を使う「何でも屋」的な役割で、農村開発、女性の副収入向上、地域産品の商品開発といったことをしていました。RCFのコーディネーターと、似たような立ち回りですね。

帰国後は10年ほど、ドキュメンタリー番組の制作会社で、NHKBSの番組や、情熱大陸、ガイアの夜明けなどの番組の企画をテレビ局に提案する仕事をしていました。その後、2012年にRCFに入社したという流れです。
ードキュメンタリーに可能性を感じたのはなぜですか?
もともと私はテレビっ子で、自分にとってのテレビは、世の中の多様性を示唆し、可能性を広げてくれる情報獲得手段のひとつだという認識があったんです。

その後大学でマスコミュニケーション論を学んで、取材したものから自分の伝えたいものを切り取る、編集の可能性とプロパガンダ的なリスクの両方に興味を持ちました。

あとは、元々、大学進学時は発展途上国の教育開発の現場に関わりたいという思いの方が強かったのですが、協力隊赴任中に国際公務員の方のお話も伺って、国際公務員は自分には違うかな、と。海外に出たことで、途上国よりもむしろ日本社会の課題の方をなんとかしなきゃいけないんじゃないか、という思いが強くなりました。
ーRCFには割と初期のころから参画されていますが、震災が転機となったのでしょうか?
そうですね。

東日本大震災との関わりでいうと、発災直後の2011年4、5月から、ボランティアとして石巻に通っていました。

普通の会社員と同じく、自分が行けるタイミングで通っていたんですが、一過性の活動ではなくその先に続くものが良いと思い、石巻の現地NPOの活動に参加していました。在宅避難者に聞き取りを行って、ニーズを聞いて物資を配るという内容です。

そのなかで、たとえばなかなか情報や物資が避難所以外のところでは行き届かないといった現状を見るにつけ、現場の課題を解決したいと思うようになっていきました。一方で、テレビ番組で被災地のリアリティを伝えるには、制約や限界を感じてしまって・・・。

そんなある日、仕事で復興関係のリサーチをしていたときに、ツイッターで代表の藤沢がツイートしたRCFの活動報告会のお知らせを見かけて、聴きに行くことにしたんです。それがきっかけになりましたね。
ー運命的な出会いですね!
実は私、大学時代にすでに代表の藤沢には会ってるんですよ。自分が主催側で運営に関わる学生シンポジウムの参加者として藤沢が来ていて、ディスカッションや交流会でも話していたんですよね。

だからツイッターで見つけたときも、「見覚えがある名前だな」と目に止まって開いたという感じです。

その活動報告会は実際、採用説明会も兼ねていて、ちょうど釜石市とUBSグループのコミュニティ支援プロジェクトが始まって現地常駐スタッフを集めるタイミングでした。現場で仕事できるというのと、青年海外協力隊の時とアプローチ方法は一緒なんじゃないかということで興味を持って、RCFに応募しました。
◆入社して、今どんなことを感じていますか?
先日、同僚の向野と、「コーディネーターの仕事って、自分の仕事がなくなることがやりがいにつながる、変な仕事だよね」みたいな話をしていたんです。

特にRCFが得意とするのは、0→1のフレーム(仕組み)を作ること。その過程で、多様な関係者に「本来大事にしたいことってこれですよね」と繰り返し伝えながら価値観を共有して、且つ軌道に乗せるために何度も軌道修正して…、ある程度形を変えながらも、最終的に自分たちがいなくなっても地元に根付いていくのが理想だし、「自分達はもうお役御免だな」って思えることが達成感につながるなと思っています。

仕組みだけが受け継がれても維持されない。プレイヤーが変わっても、同じ成果やスピード感でなくても、目指すものやゴール感、やりたいこと、大事にしたいことといった価値観が受け継がれるというのが、大事なことだと思うんですよね。
ー地域でのプロジェクトの自走化のために、「価値観を受け継いでいく」という点で、どんなことを意識していますか?
自分がプロジェクトのどのポジションにいても、この先の自走化のためにこういう人を巻き込んだほうがいいよね、ということはいつも念頭に置いていますね。その上で、徐々に関わり方を変えていく。

地域の人たちが続けていけるサイズ感で、仮にサイズダウンしてでも残していくために、無責任に「これやるべきだよね」と広げすぎるのもよくないなと考えています。

どういう人たちと、どういうやり方をしていったらいいか、ということを常に意識していて、それで実際に自分たちがいなくてもプロジェクトが回る形につながっていくところが、手応えなのかなと思いますね。
ーそのための、プロジェクトに関わる地域の方々とのコミュニケーションとしては、どんなことに気をつけていますか?
地域の方々は、協働するとはいえ、上司部下の関係ではないので、ただ「この仕事をやってください」ではことが進みません。

一緒に協働する意味ーつまり、その方にどんな役割を期待していて、それをやることでその方のやりたいことにもつながる、といったことを、かなりの頻度で相互に確認しあってきました。
ー釜石でのこれまでの常駐を振り返って、最もやりがいに感じていることは何ですか?
やりがいでもあり難しさでもあるのは「迎合と共感は違う」ということですね。

たくさん辛い思いをしている被災者の方がいらっしゃるのも分かっているけれど、それを慮りすぎてブレーキをかけるのも違うと思っていて。それから、地域のしがらみを考えすぎて嫌われることを怖がってしまって、地域のパワーバランスに全て合わせるのも違う。

私が現地に入った2012年は発災からまだ時間が経っていなくて、どれだけ身近な人を亡くしたとか、お互い気配りしながら接してる時期だったんですよね。

そういう重みがあるなかでも、新しいスタートを踏み出そうとしている思いもあるので、一緒にやっていこうっていう気持ちで、腹を割って話すということをやってきました。

「3歩進んで2歩下がる」ではないですが、トライ&エラーや小さな成功体験を積み重ねつつ関係を築き上げていって、あとから振り返った時に、あの時の経験が大事だったねと、お互い良かったねって言い合えるのがやりがいにつながると思います。

あと、釜石に赴任以来、UBSグループ釜石コミュニティ支援プロジェクトを主軸として5年間取り組んだのですが、UBSプロジェクトの推進のために様々なアプローチで挑戦したことで、その後、別のプロジェクトなど新たな成果に次々と発展していったんです。それがやりがいでもありましたし、大きな達成感になりましたね。
◆働きやすさはどうですか?
制度の充実度がどうか、とかは個人的にはあまり重きを置かないタイプでして。

「べき論」で固まった、規則ありきの勤務形態ではなく、イレギュラーなことが発生したらそれに対応してくれるといったような、寛容さが組織にあることの方が大事なことだなと思っています。

それから、RCFを卒業した人が、業務委託など何らかの形でその後も関わっていることが多くて、RCFという組織が同じ価値観や共感でつながる「宿り木」のようになっていることも、すごくいいなと思いますね。
◆RCFで、あるいは個人で、どんなことをやっていきたいですか?
RCFで、という意味では、もともと特定の関心領域というのはないんですよ。

コーディネーターとして動くのであれば、地域のニーズやリソースの組み合わせで何を生み出せるかが役割だと思っていて、もちろんそのテーマに関して対等に話せるだけの語彙や翻訳力があるほうがいいけど、そのテーマのプロフェッショナルになるわけではない。

そこにある素材からこういうことができそうだな、という可能性や、やり方を考えるということ自体が面白くて仕事をしています。

もし領域やテーマにこだわるなら、それはコーディネーターではなく実行する側に回った方が良いと思います。

被災地でのコミュニティ形成の経験を活かすという観点でいうと、トヨタ社が今、最新のITソリューション技術を活用した新しい実証実験シティの建設(Woven cityプロジェクト)をしようとしていて、個人的に興味を持っています。

農業や学校教育関係など、様々な分野とのコラボレーションを考えているようなので、そこに社会事業コーディネーターという立場での関わりを提案できないかなと。
◆RCFへの応募を検討される方に向けて。山口さんは、どんな方と一緒に働きたいですか?
現場にいて思うのは、課題や違和感を指摘するのは誰でもできるけど、代替案とか、現状を良くしていくには何があるか、を表出できる人は貴重だなと思っています。

完璧じゃなくてもいいし、ソリューションとして型にはまってなくても、こういうことが考えられますよね、という提案、アイデア、ヒントが出せる人。選択肢を自ら作れる人。

実際動かすのは協業する相手の人だけど、その相手に、「それならできそうかも」と思ってもらえる何かを、臆せず差出せることが必要です。

逆に言えば、指示を待って、ただそれを受けて動くだけの人は向いていないと思います。

ベストエフォートじゃなくてもよくて、大事なのは、今より少しでも良くするには何があるか?という探究心ですね。それから、「歩留まり」の感覚。地域の人だとここまでは重すぎるとか、やりきれないよね、という感覚を持った上での代替案が考えられると、いいんじゃないかと思います。