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行政官がインタビュー ~メンバー編 〜「RCFとみかん」

だんだん寒くなってきましが、皆さんお元気ですか。早いもので今年もあと少しですね。
さて、以前、プロジェクト編として宇和島の事業を取り上げましたが、今回はこの宇和島事業に参画している清原優太さんにフォーカスしてインタビューを行いました。清原さんは、根っからのみかん好きです。東大在学中に、「東大みかん愛好会~最高のみかんの体験をあなたに。~」という部活を立ち上げてしまうほどです。2018年、「マツコの知らない世界」にも「みかん○○!?」として出演していますが、ほとばしる情熱がひしひしと伝わってきます。みかんを食べている時の表情がなんとも言えません。そんな清原さんへのインタビュー、早速始めましょう。

なぜ、みかん?

―― なぜ、みかんについての活動をはじめたのですか。

そもそも、生まれた時からみかんが好きだったからです。生まれてすぐインドネシアに引っ越したのですが、初めて話した言葉がインドネシア語で「オレンジジュースちょうだい!」だったそうです(笑)。ずっとみかんは好きで、大学時代は、みかんをたくさん食べることがメインな活動である(笑)東大みかん愛好会をノリで設立しました。

―― 東大みかん愛好会の活動について教えてください。

実は、日本におけるみかんの消費量は、1975年から約70%も減っているのです。衝撃じゃないですか。東大みかん愛好会では、日本のみかんの消費量を増やすことを理念として掲げて、みかんに関係した話題づくりを行いました。具体的には、東大の学園祭「五月祭」に松山市と連携して蛇口からみかんジュースを出してみたり(「愛媛県松山市の小学校では、蛇口からみかんジュースが出る」という都市伝説を具現化したもの。)、JTB、NPO法人湘南スタイルと協力し、『お座敷列車で行く!小田原みかんの旅』というプロモーション企画を実施したりしました。

 

 

みかん産業の課題について

―― みかん産業の課題についてどのようにお考えですか。

東大みかん愛好会の活動をしているときに、全国の農家を回ったのですが、産地同士の連携があまりなく、ノウハウ等の情報共有が進んでいないなと感じました。ある産地で行なっている栽培方法について、他の農家の方に話してみたら、面白がってチャレンジしてくださったりしたこともありました。
あと、マーケティングやブランディングが他の品種に比べるとあまりうまくいっていない印象です。イチゴは「とちおとめ」、リンゴは、「ふじ」や「つがる」と品種名を皆さんすぐ言えると思いますが、温州みかんや柑橘の品種はなかなか思いつかないですよね。先ほどお話ししたとおり、みかんの消費が落ちてしまっているのは、このようなブランディングがうまくいっていないのが一つの要因だと考えています。
ブランディングがうまくいっていない原因としては、やはり、産地間の分断が関連していると考えています。リンゴの産地は青森と長野に集中しているのですが、みかんの産地は全国に散らばっています。海外に売り込むときも、和歌山のみかん、静岡のみかん、愛媛県のみかん、熊本県のみかんのように、どこどこのみかんというようにバラバラに売り込んでいるので、これをもっと連携して品種ごとにブランディングできたらよいのではないかと思っています。  

―― その気づきがあったので、全国のみかん農家の方などが集まる場を設計されたのですね。

そうです。情報共有を促すために、一か所に集めたらよいと考えました。産地・業種横断的にモデルケースを集約することを目的として、日本みかんサミットを企画し、2016年に第1回の日本みかんサミットを、温州みかん発祥の地である鹿児島県長島町にて開催しました。第1回は生産者が多かったのですが、2017年に和歌山県有田郡湯浅町にて開催した第2回はAI(!)など様々な分野の研究者にもお声かけしました。その他、市場関係者、行政関係者、販売関係者、消費者を含め200人規模のイベントになりました。
日本みかんサミットは、分科会形式の座学が中心です。例えば、農家の方とAI研究者の方に、「名人技の再現は可能か?」をお題にパネルデスカッションをしていただいたりしました。みかんも盆栽と同じように剪定をするのですが、慣れていない人がすると、本来なら切ってはいけない枝を切ってしまうといったことが起こります。達人が経験で剪定していたのを人工知能を使って再現できるのか否か。現状の人工知能のレベルでは難しい、というのが結論でしたが、今後乞うご期待ですね。その他も、農業経営学の研究者、農協の組合長、みかんのメジャー産地である静岡、和歌山の農家の達人などが一同に会しました。これほどまでに多種多様な方が一堂に会する場は他になかなかないのではと思います。普通、農家の方と研究者の方が会ったりしませんからね。私は、このサミットの中で一番重要なのは、交流によって生み出される様々なシナジー効果であると考えています。

日本みかんサミットの成果は?

―― 日本みかんサミットの成果は出始めていますか。

成果は小さなものから中規模なものまで出ています。例えば、静岡の三ケ日のみかんの青年部の方々が、このサミットがきっかけでつながった農家さんのところに年1で研修に行くようになりました。このような産地間交流がところどころで生まれています。
また、中規模な成果について3つご紹介すると、一つは、和歌山県で開催された第2回サミットの中心メンバーであった和歌山の農家の方5名が、昨年10月の西日本豪雨で被災した宇和島の農家の方を、同じみかん農家として助けたいと思われて声を上げ、その5名の農家を含め日本みかんサミット実行委員会主導で、支援金を募るクラウドファンディングを立ち上げました。和歌山と宇和島はみかん産地としてはライバル同士ですが、サミットで一緒にみかんについて語らった仲間が苦しんでいるのを助けたいという思いが生まれました。このクラウドファンデジングでは、寄付していただいた方に、リターン品として、宇和島の農家さんから応援価格で購入した「規格外でも美味しいみかん」を使用した100%のストレートジュースを届けました。結果的に、総額約430万円を宇和島に届けることができました。(※1)

(※1)みかんジュースをみんなで飲んで、被災したみかん農家さんを応援したい

二つ目の事例としては、サミットで出会った和歌山県の農家の方と研究者が協力した結果、生鮮食品分野では個人ではじめて、「機能性表示食品」(※2)として消費者庁に受理されたことが挙げられます。このことにより、その農家の方がつくった温州みかんを販売する際に、このみかんに含まれる成分が骨の健康維持に役立つことを表示することが可能となりました。農協などはリソースがあるので、科学的根拠を集めやすいのですが、今回は、研究者の方と協力することで、個人が取得できたところが画期的です。
この研究者の方は、今、同志社女子大学にいらっしゃる杉浦実教授なのですが、旧三ケ日町の住民の皆さんにご協力いただき、10年間、血液検査などでデータを取り続けて追跡調査を行い、みかんに多く含まれる「β-クリプトキサンチン」という成分が骨粗しょう症の発症リスクを大きく低下させることを突き止めました(通称、「三ケ日町研究」)。このエビデンスを今回の事例では活用しています。

(※2)「機能性表示食品」制度について「機能性表示食品」制度は、2015年から始まった制度で、安全性の確保を前提とし、科学的根拠に基づいた機能性が事業者の責任において表示されるようになりました(例えば、「おなかの調子を整えます」など)。機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者の皆さんが商品の正しい情報を得て選択できるようにするためです。事業者は、国の定めるルールに基づき、食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができます。詳細はこちらWEBページをご覧ください。

三つ目の事例としては、サミットにお越しになっていた三重県庁の方が、温暖な気候で年中みかんが採れる三重県南部で栽培され、露地栽培の中では一番早く販売される超極早生(ごくわせ)温州ミカン「みえの一番星」(※3)の美味しさを、その場にいらっしゃったフルーツ専門店・新宿高野の広報の方に話したところ、商談が進み、今年の9月に新宿高野にフルーツパフェとして登場(※4)することになったことが挙げられます。

(※3)「みえの一番星」みえの一番星は、露地栽培の中では一番早く販売されることと、産地の希望の星になることを願い、三重県の鈴木英敬知事が命名。

(※4)新宿高野本店において、三重県産超極早生みかん「みえの一番星」の首都圏プロモーションが実施されました。

―― さて、話は変わりますが、清原さんは、RCFが手がけている「宇和島市 復興まちづくり支援」事業(※5)については、どのように関わっていらっしゃるのですか。

前インタビューされていたRCFの若田と同じように、コーディネーターとして参画しています。正確には、現地でこの事業を担当しているコーディネーターの方がいるので、そのコーディネーターのコーディネーターという位置づけです。月1で現地には行っています。
愛媛県はみかん王国というイメージがありますよね。皆さん、「愛媛」のみかんという認識です。西日本豪雨の被災地である宇和島の旧吉田町は、実はその愛媛のみかん発祥の地なのです。しかし、「宇和島」はあまり知られていません。旧吉田町は、100種類ぐらいのみかんを栽培しているのですが、ブランド化ができていないのが課題です。ですので、今回、宇和島みかんのネット通販のホームページを立ち上げて、宇和島のみかんをブランド化して売り出していこうとしており、私は、どう売っていくかの戦略支援などをしています。過去、宇和島で有名なみかんの品種の一つであるブラッドオレンジでは、ネット通販をしていて(※6)、結構売れていました。農協としては、売り出していく品種をブラッドオレンジ以外にも拡大していきたいという考えがあったので、その思いを実現していこうと思っています。
また、川上の生産者に対する支援にも携わっています。具体的には、新規就農者のケアをしています。現地にコーディネーターがいるので、その方と協力して、新規就農者が土地を見つけられないなどの困りごとに対して、専門家や行政、関係機関などにつないだりして解決の手助けをしています

(※5)「宇和島市 復興まちづくり支援」事業の概要ついては、第三回のインタビュー記事をご覧ください

(※6)東洋のナポリ・宇和島が産んだブラッドオレンジ

清原さんの目指すもの

―― 今後、清原さんはみかんとどう関わっていきたいですか。

インタビューのはじめの方に、みかん産業はブランディングがうまくいっていないのが課題だと申し上げましたが、各地で栽培されている様々な品種の情報をまとめてウェブに掲載し、比較できるようにした上で、個々の品種のブランディングを行っていきたいと考えています
よく、一番おいしいみかんは何ですかと聞かれるのですが、時期、品種により様々なみかんをご提案することができます。それほど、みかんの世界が奥深いのです。私としては、日本のみかん全体を盛り上げていきたいです。一言でいえば、消費者も生産者も含め、みかんのファンを増やしていきたいですね。これだけ品種があるのに知られていないのはもったいないです。コミュニティづくりといった観点からは、日本みかんサミットは業界版になりますが、みかん愛好会のような団体同士を連携させたり、みかんが好きな消費者としての社会人が入れるコミュニティをつくったりもしていきたいです。

また、私としては、「サードウェーブみかん」という概念を広めたいですね。コーヒーでいうと、ファーストウェーブは、安価で気軽にコーヒーが飲めるようになったこと、そして、セカンドウェーブは、スターバックスに代表されるように、どこでも安定しておいしいコーヒーが飲めるようになったことを意味します。サードウェーブでは、カップに注がれるまでの工程を含め、コーヒー本来の価値を重視しています。エチオピア産の豆ではなく、エチオピアのどこどこ農園の豆といったように、産地にもこだわって様々な価値を消費者に提供しています。こだわりが多元化しているのがサードウェーブです。
これをみかんに置き換えると、77%減少する前の、皆さんの食卓にあったのがファーストウェーブ。光センサー技術により、非破壊で糖度が測れるようになり、消費者のニーズにあった糖度でみかんを提供できるようになったのがセカンドウェーブ。サードウェーブは、農家に注目したり、香りに注目したり、様々な角度からみかんを楽しむという世界観が広がっていったらよいなと思っています。

―― 清原さんは、RCFに入社されて約1年ですが、宇和島のプロジェクトを担当されてのご感想は。

昔お世話になっていた農家の方が宇和島の方で、西日本豪雨後、何かしたいと思っていたのもあり、宇和島の復興のお役に立てているのはうれしいです。
日本みかんサミットもそうですが、今までプレイヤーとして動いてきましたが、今回のプロジェクトでは、あくまでもコーディネーターとして関わっているので、物事の動かし方を今までとは異なった視点から考えないといけなくて、そこが勉強になるなと感じています。現地のみかん産業が、RCFのコーディネーターがいなくなっても、うまく回っていく仕組みをどうつくっていくか、難しいですがやりがいがあります。

インタビュアーから最後に一言

みかんの消費量が70%も減少しているのは衝撃でした。また、みかんの品種が100種類以上あるものの、りんごなどと異なり、あまり品種名が知られていないなどの気づきもありました。
事実を「知る」ことというのは、重要であると思っています。私は、数年前に、日本の子供の7人に1人が貧困である、という事実を知り、衝撃を受けました。それ以降、認定NPO法人Teach For Japan の活動など関連する動きを調べたりしています。何かアクションを起こすには、そもそもその現状を知らないとできません。どの回のインタビュー記事も同様ですが、日本の第一次産業の状況などデータをところどころに入れるようにしています。是非、気になったことがあれば、もっと調べていただき、それをきっかけに何かアクションにつなげていっていただければと思っています。

※子供の貧困については以下のサイトをご覧ください。

編集後記:まずは、みかんファンになってみようと、今回のインタビューで話題に上がった新宿高野に「みえの一番星」のパフェを食べに行ってみました。酸味と甘味のバランスが絶妙でした~。これもアクションの一つ(笑)

なんと、インタビューの中の話にあった、宇和島のミカンのウェブサイトが開設されました!皆さん是非、見てください。

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